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概要

 ロタウイルス感染症は、年齢にかかわらず何度でも感染しますが、症状は初感染時が最も重症で、その後感染を繰り返すにつれて軽症化し、不顕性感染(感染しても症状が出ないこと)も多くみられます。顕性発症は5歳未満の乳幼児に多くみられます。主な症状は急性胃腸炎(ロタウイルス胃腸炎)で、ときに脱水、けいれん、肝機能異常、腎不全、 脳症等を合併します。

 ロタウイルスは、A〜H群に分類され、ヒトへの感染が確認されているのはA〜C群です。その中でもA群がほとんどを占め、C群は少なく、B群の報告はわが国ではまだありません。日本でのロタウイルス胃腸炎の発症は冬〜春に多くみられますが、近年のA群の検出のピークは3〜5月となっており、約20年前のピークが冬季であったことと比較すると、流行シーズンが遅くなってきて います。

 生後3か月までは、母体由来免疫によって感染しても症状が出ないか、症状があっても軽く済みますが、生後3か月以降に初感染すると重症化しやすくなります。特に重症化しやすいのは生後4 〜 23か月の乳幼児です。

 ロタウイルスは世界中に分布し、感染者の下痢便1グラム中には100億〜1000億個のウイルスが含まれています。 ロタウイルスは感染力が強く、ウイルス粒子10〜100個で感染が成立することから、衛生状態に関係なく5歳までにほとんどすべての乳幼児が、このウイルスに感染します。ワクチン導入前に世界では毎年約 50万人の乳幼児が死亡していたと報告されており、その80%以上が開発途上国の乳幼児です。

 日本でのロタウイルス胃腸炎による死亡例は、人口動態統計によると、2011年18人、2012年11 人、2013年12人、2014年7人、2015年5人、2016年6人、2017年7人でした。死亡例は開発途上国に比べると少ないものの、感染の頻度は開発途上国と大きな差はなく、小学校就学前までに約2人に1人がロタウイルス胃腸炎で小児科外来を受診し、5歳までにロタウイルス胃腸炎で外来受診者の15〜43人に1人(約2.65〜7.8万人)は入院していると推定されています。

感染経路

 感染は糞口感染で、主な感染経路は間接接触もしくは直接接触による感染です。また、半数近くに気道症状がみられることや罹患率の高さから気道感染(飛沫感染)の可能性も考えられます。

 ロタウイルスは患児の糞便中に大量に含まれます。感染性のある期間(糞便中にウイルスの検出される期間)は通常、下痢発症2日前から発症後10日間くらいとされますが、重度の下痢の場合は25〜57日間検出され、免疫不全状態ではさらに長期に及びます。潜伏期はおよそ2日です。

症状

 嘔吐と下痢、発熱の3つが主な特徴です。特に乳幼児では3つともの症状がそろいやすく、脱水や代謝性アシドーシスをきたしやすくなります。

 典型例では病初期に嘔吐と発熱がみられ、続いて下痢が始まります。嘔吐は特徴的症状で、突然起こり、これを契機に医療機関を訪れるケースが多く見られます。通常、嘔吐は発症1〜2日目にみられ、3日目以降少なくなります。経過中の総嘔吐回数は乳幼児では5〜6回を超えることも多くあります。

 下痢は水様性から泥状です。患児の半数近くにみられる白色〜黄白色便は特徴的ですが、同様の色調はノロウイルス感染症についてもみられるため注意が必要です。腸重積の合併などがなければ、通常血便はみられません。

 発熱の持続は2日を超えることは少なく、多くが半日〜1日です。最高体温は40.2℃に達することもあり、39.1℃以上が14%に、38.0℃以上が65%にみられます。

 合併症として頻度が高いのは脱水と代謝性アシドーシスです。その他、電解質異常、低血糖、麻痺性イレウス、腸重積、蛋白漏出性胃腸症、筋炎、痙攣、脳炎、脳症などがみられますが、ロタウイルス感染との因果関係が明らかでないものもあります。

治療

 特異的な抗ウイルス療法はありません。対症療法が中心となり、嘔吐や下痢に伴う脱水や電解質異常に対して経口または経静脈的に補液が行われます。重症度により経口補液のみでよいか、輸液が必要であるかを判断します。一般的に、軽度の脱水には経口補液が中心となり、中等度以上(5%を超える体重減少)の脱水例は輸液を要することが多く、入院治療を考慮します。

 薬物療法としては、下痢に対して整腸薬(乳酸菌製剤など)が用いられます。下痢が長引き、二次性乳糖不耐症の疑われる乳児には乳糖分解酵素製剤が用いられます。

予後

 現在でも発展途上国を中心に年間約80万人の乳幼児がロタウイルス感染症による脱水で死亡しており、重症例には速やかな処置を必要としますが、日本を含めた先進国では死亡例は少なく、通常およそ1週間の経過で治癒します。しかし、原発性免疫不全症や骨髄移植後の子どもでは、いったん感染するとウイルスを排除できず致死的になることがあります。

予防

 現時点で有効な予防法はなく、4〜5歳までにほとんどの子どもが感染します。

 現状では、院内感染予防対策などにより感染の拡大を防ぐことが重要です。ロタウイルス感染症では間接接触による感染が多いことから、罹患児の隔離、感染源である糞便やおむつの適切な処理、衛生的手洗い(特に、母親と医療従事者)、汚染された衣服の次亜塩素酸消毒などが徹底される必要があります。

ワクチン

 現在ロタウイルスワクチンは、1価ロタウイルスワクチンと5価ロタウイルスワクチンの2種類が日本国内において認可されています。2020年10月から定期接種になりました。

■ロタウイルスワクチン
ロタウイルス (1価・5価)− (2020年8月1日以降に生まれたお子さん)
ロタウイルス (1価・5価)− (2020年7月31日以前に生まれたお子さん)

参考資料として
・「最新感染症ガイドR‐Book 2012」-日本小児医事出版社 2013年10月発行(編集:米国小児科学会、監修:岡部信彦 川崎市健康安全研究所所長)
・「予防接種に関するQ&A集・ロタウイルス」-一般社団法人日本ワクチン産業協会(岡部信彦 川崎市健康安全研究所所長、多屋馨子国立感染症研究所感染症疫学センター第三室(予防接種室)室長 )
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
更新:2020/09
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